2026.05.22

自社で動かせるデータ基盤へ。再構築で実現した透明性と自走力(ファイントゥデイ様)

お客様情報

企業名 :株式会社ファイントゥデイ
事業内容:パーソナルケア製品のマーケティング・販売等
担当者 :IT本部 Vice President 小室 英彦 様
     IT本部 Manager 吉田 栞莉 様
URL  :https://www.finetoday.com/jp/

サマリー

抱えていた課題:
資生堂グループからの独立時、短期間での立ち上げを優先したことで、データパイプラインの仕様がベンダーにしか把握できないブラックボックス状態になってしまっていた。データの確認や修正のたびにベンダー経由での対応が必要となり、スピードと自由度の面で課題を抱えていた。

ナウキャストのご支援内容:
データアセスメントで現状を診断し、優先度の高い課題から段階的にスコープを広げながら支援を行った。Snowflake × dbtによるDWH再構築、Terraformによるインフラのコード化、セマンティックレイヤーの整備まで一貫して実施し、各技術領域のハンズオンやドキュメント整備を通じた内製化支援も並行して進めた。

支援の成果:
データリネージの可視化やメタデータ整備によりデータへの透明性が向上。適切なモデリング設計により、SQLの記述量が大幅に削減され、スピード・コスト・品質に好影響が出ている。将来的にも崩れにくいセキュリティ設計が整い、データ活用・AI活用への基盤が整備された。


【課題】ブラックボックス化したデータ基盤が生んだ、スピードと自由度の壁

――データ基盤の再構築プロジェクトが立ち上がった背景について教えてください。

小室様:
現在のデータ基盤は、資生堂グループから独立するタイミングで構築されたものです。短期間での立ち上げが求められる中、長期的な設計よりもまず社内メンバーがデータを見られる状態を作ることをゴールに進めました。当時はそれが唯一の選択肢でしたし、その判断は間違っていなかったと思っています。

ただ、そうした背景もあり、データに誤りがある場合には自社で確認ができずベンダーに問い合わせる必要があったり、修正にもベンダーが調査・改修を行うため時間がかかってしまったりと、使う側の利便性の面での困りごとが日常的に発生していました。

企業として成長していくためには、経営判断や事業成長に必要な戦略を支えるデータを、精度高く、早く提供できる基盤が不可欠です。創業期を越え、事業の成長フェーズが次の段階に入るタイミングで、しっかりとしたデータ基盤を作り上げたかったというのが、プロジェクトに踏み切った大きな要因でした。

IT本部 Vice President 小室 英彦 様

――ナウキャストを選んでいただいた決め手は何でしたか。

小室様:
決め手は、「Snowflakeを自社でも実践的に活用している」という点でした。プロジェクトベースで導入してきたパートナーだと、どうしても表面的な提案になりがちです。最終的には社内で自走していく必要があるため、実際に運用している方の声を聞けることは、現場への落とし込みを考える上で非常に有益で、説得力が違いました。

パートナー選定ではRFPを出して複数社からご提案をいただき、技術的な知見や実績・事例、担当者のスキルやコミュニケーションも含めて総合的に判断しました。ナウキャストさんとは、今回のプロジェクトが始まる前にデータアセスメントをご依頼していたご縁もあって、データマネジメントに対する知見は元々分かっていましたし、アセスメントを通じて当社が持っていなかった考え方を入れ込んでもらえたことも、評価していたポイントの1つです。

吉田様:
RFPの段階から、こちらが気づいていなかった点を的確に指摘してもらえたのが印象的でした。仮組みしていたスケジュールに対して「データの設計の部分はもっと時間を取った方がいい」とアドバイスいただいたり、優先順位の付け方にも根拠がきちんとあったりと、提案の段階から信頼感がありました。

また、以前のプロジェクトで一緒にデータを見ていただいた際に、こちらが一度伝えたことへの理解の解像度がすごく高いと感じていたので、新しいデータソースでもスムーズに進められるという確信がありました。

【ご支援内容と成果】データの透明性と自走できる体制の構築へ

――今回のプロジェクトを経て、どのような変化がありましたか。

小室様:
 データ品質・ガバナンスの面では、データリネージが追えるようになり、メタデータの整備も進んだことで、「このデータはどこから来ていて、何を意味するのか」を自分たちで確認できる状態になりました。AI活用やデータ可視化にも欠かせない「データを取り巻く整備」が、大きく前進しました。標準的なテーブルをしっかりモデリングできているので、「このデータはどういう意味なんだろう」という曖昧さも極力少ない状態になっています。

セキュリティ面では、最小権限の原則に基づいたロール設計ができているので、今後データを使う人が事業成長に伴って増えた場合でも、ポリシールールに沿って正しく管理できるようになりました。現状だけでなく、将来的にも崩れにくい設計が整ったという安心感があります。

命名規則やロールの考え方など、基盤面まで含めてトータルで考え抜かれた形に仕上げられたのは、ナウキャストさんが自社でも実践的に活用しているからこそ、知見をエッセンスとして入れてもらえたところだと思っています。アセスメントで的確に指摘いただいたことがきっかけで、アーキテクチャの考え方が変わり、自分のキャッチアップの仕方まで変わりました。

吉田様:
ディメンショナルモデリングとファクト設計ができたおかげで、今まで何千行も書かなければいけなかったSQLが、数十行で済むようになりました。作業時間の削減だけでなく、抽出するデータの品質向上、コストの削減にも繋がっています。

――内製化に向けた支援についてはいかがでしたか。

吉田様:
dbtを使った開発はナウキャストさんに初めて教えていただいたのですが、かなり初歩的な質問にもいつも丁寧に答えていただいて、「こういうエラーが出たらこういうところを見た方がいいですよ」と事前に教えてもらえるなど、全般的にサポートはきめ細やかでした。

小室様:
ドキュメントやCI/CDのパイプラインも含めて当社に入れ込んでいただいたので、データ活用はいつでもできる状態になっていますね。

――実際にナウキャストと一緒に取り組んでみて、仕事の進め方や姿勢についてどのような印象でしたか。

吉田様:
しっかりと当社のビジネスを理解しようとしてくださるところが、期待以上でした。テーブル設計の最初の段階で、まず私たちがKPIシートと設計の叩きを作り、ナウキャストさんに確認いただいた上で、データの内容について細かくヒアリングしていただきました。そういった、当社のデータとビジネスに対する丁寧なキャッチアップがあったからこそ大きな手戻りがなく、実質4ヶ月ほどの短期間で完成できたのだと思います。

小室様:
 率直にプロフェッショナルだな、と感じていました。コンテキストをうまく説明できないような質問に対しても丁寧に回答していただき、「ここが分からないだろうな」という部分を推測してフォローアップしてくださいました。

設計書や運用手順書などのドキュメントも、「この後困らないように」というところに細かく気を配っていただいていました。プロジェクトとして何を仕上げてお渡しすべきか、内製化を見据えてどこまでやるべきかなど、そういった高い視点を担当メンバーの皆さんが持っていることに、純粋に「どうやってキャッチアップしているんだろう」と興味を持ちました。

【今後の展望】経営判断と事業成長を、精度高く・素早いデータで支えていく

――今後、この基盤をどのように発展させていきたいですか。

小室様:
会社の成長に伴い、業務変革の場面でデータやAIエージェントを活用していく機会は確実に増えていきます。今回整えたデータ基盤を土台に、そうした活用を本格的に進めていけることを楽しみにしています。

吉田様:
当社は11の国と地域で事業を展開しています。それぞれが同じ指標で状況を把握できるような基盤が整ったので、経営的な判断に関わる数字の解像度もクリアになっていくはずです。グローバルでの意思決定のスピードアップに繋がっていくことを期待しています。

IT本部 Manager 吉田 栞莉 様

――最後に、同じようにデータ基盤に課題を感じている企業へのアドバイスをお願いします。

吉田様:
今回プロジェクトがうまくいった要因は3つあると思っています。1つ目は、社内でちゃんとデータが分かる人材をプロジェクトの中心に配置したことです。「この数字はどういう意味か」「どういう流れでデータが作られているか」を理解した上で設計できたので、手戻りが少なかったです。

2つ目は、将来を見据えた設計について徹底的に検討したことです。「将来こうしていきたいから、これを前提にしておかなきゃいけないよね」という議論をナウキャストさんと丁寧に重ねました。

3つ目は、プロジェクトの枠を超えて協力し合える社内文化です。データの全容を把握するためにプロジェクト外のメンバーにも協力を求めたのですが、立場や担当に関係なく、自分事として一緒に調査してくれたことでスムーズに進めることができました。

小室様:
結局、データや業務プロセスは自社の人間が一番把握しています。自社の理解や人材のスキルを生かしながら、ベストプラクティスを持ちつつ、現場での実践から培った知見を自社に落とし込んでくれるプロフェッショナルとディスカッションしていく。その組み合わせが、特にこういう領域では大事なのかもしれないですね。


※所属・肩書等は取材当時のものです。

取材・文:及川 梨緒菜
写真:宮川 歩

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