2025.08.26

徹底した企業研究の仕組み化に取り組む住友不動産のオフィス営業哲学

~求人データで成長企業をいち早くキャッチ~

東京都心のオフィスビルをはじめ、高級賃貸マンション、戸建住宅、住宅リフォームなど、不動産に関わる幅広い事業を全国規模で展開する総合デベロッパー、住友不動産株式会社様。現在、オフィス営業の現場でナウキャストのオルタナティブデータをご活用いただいています。同社のデータ活用を推進するビル事業本部 法人営業第二部長の副島様に、ナウキャストCEOの辻中がお話をうかがいました。

「選ばれるビル」を作る、住友不動産の営業力

辻中:
本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。この対談では、住友不動産様のオフィス事業戦略、特にその営業力、東京のオフィスマーケットへの取り組み、そして今後のデジタル化の展望について、深く掘り下げておうかがいしていきたいと思っています。

さっそくですが、住友不動産さんの営業力は、業界内で非常に高く評価されています。その強みはどこにあるのでしょうか?

(株式会社ナウキャスト 代表取締役CEO 辻中 仁士)

副島様:
自分たちの営業力が外からどう評価されているのか、正直なところ分からない部分も多いのですが、「住友不動産出身の営業マンはすごい」といった声を聞くことが多いのはうれしいことです。ただ、我々の根底にあるのは、「良いものを作って良いお客さんに入居していただき、その結果お客さんも我々も成長していく」というビジネスモデルなんです。そのために、我々のビルの良さをお客様にお伝えするのはもちろんのこと、逆にお客様から「ここをもっとこうした方がいいよ」「こういうビルを作った方がいいよ」といったフィードバックを日々営業マンが聞いてきて、それを技術的に噛み砕いて商品企画にフィードバックするということを自問自答しながら繰り返してきました。なので、「営業力がある」というよりも「選ばれるビルを作れている」という点がまず大きいと考えています。

東京のオフィスマーケットの規模は今やニューヨークやロンドンを抜き、多種多様な企業のオフィスが一箇所に集中している都市となりました。50年前からこれを見据えて「都心3区に周辺7区を合わせて都心10区としても、東京ならばオフィス事業が成立する」と考えていた点も、我々が他社と少し違うところです。そうして投資をしてきたことが、現在の業界トップクラスのビル棟数と面積に繋がっていると思います。以前は「オフィスのデパート」という表現をよく使っていましたが、要するに「住友不動産に相談すれば、どんなビルでも紹介してくれる」と思っていただけるような存在を目指してきました。

辻中:
そういった相談をタイミングよくキャッチするために、どういった営業活動をしていらっしゃるのでしょうか?

副島様:
お客様に我々のオフィスに入居いただくと、そこからまた色々な仕事が始まったりするんですよ。だから、僕らは単にテナントさんが入ればそれで良いという「大家業」ではなく、「デベロッパーとして、企業の皆さんをどのようにサポートできるのか」というマインドでやっています。パンフレットを持って「1日50件売り込むぞ!」というような、ただ件数を追うだけの営業はまったく考えていません。

住友不動産として、お客様が選んでくださる、「いいね」と思ってくださるものを常にバージョンアップして作ってきたつもりなので、まず自分がそれを噛み砕いて理解することが必要です。その上で「顧客理解力」や「傾聴力」が非常に重要になります。お客様のビジネスをよく理解し、「何を求めているか」についてストライクゾーンを外さずにお話ができなくてはなりません。

そして、おっしゃるとおり「タイミング」も非常に重要です。常日頃お会いしていれば、いつ頃そういったものをお求めになるかという時間軸もある程度わかってきます。だから、オフィスの話ばかりでなく、不動産業界の話やお客様が今後注力したいと思っているビジネスについてもお話しさせていただけるような人間関係、企業と企業の関係を日々作っています。その延長線上に、オフィスの賃貸借契約があると思っています。

(住友不動産株式会社 ビル事業本部 法人営業第二部長 副島伸一様)

お客様が成長することで自社も成長していくビジネスモデル

辻中:
あえて直接営業の組織体を持つのは、単なる賃貸契約の枠を超えた関係性を重視しているからなのですね。

副島様:
はい。「大家業」に留まることなく、「入居いただいたお客様が成長することで、我々のビジネスも成長する」という相乗効果を期待して、誘致しています。そのために常に企業研究を行っていて、様々な企業や業種の方とフェイス・トゥ・フェイスでお会いし、経済紙には書いていないようなこともヒアリングして分析しています。やはり、成長スピードが速いお客様は借り増しのペースも速いのです。

辻中:
成長性を見極めて、場合によっては条件を柔軟にしてご入居いただくという判断もあるわけですね。

副島様:
実際、そういう判断をしておいて良かったな、というのを何度か体感しています。「長い目で見た時に、このお客様はどのくらいの加速度で大きくなっていくか、お付き合いをすべきか」という目線感を持つことが大事です。例えば、不動産の原材料は土地ですから、入札が主流になる可能性もありますが、そうした入札とは対極の「随意契約」でお客様から土地を譲っていただけるような関係が構築できれば、さらに我々としてはありがたいのです。

辻中:
そういった関係性重視のオフィス営業を徹底する上で課題となる点は、どのようなことでしょうか?

副島様:
難しい質問ですね。まず、「生産性向上」は永遠のテーマと考えています。また、営業マンは毎日が勝負の連続なので、「厭戦(えんせん)気分にならない」というのも永遠の課題です。「やらされてる感」ではなく「自らワクワクしながらやっている」という状態を維持するためにも、例えば、自分の企画が上層部に通った時のちょっとした達成感を早く体験してもらいたい。そこで「仕組み作り」、合理的な最短コースでアプローチできるような仕組みが作れないかと考えていたところにナウキャストさんのデータがマッチしました。

求人データを魚群探知機のように活用し、営業の入り口を効率化

辻中:
ありがとうございます。その「仕組み作り」あるいは「デジタル化」について、もう少しお聞かせください。オフィス営業においても、最終的には人が行うべき部分が残ると思いますが、デジタルの力で効率化できる部分はどの部分だとお考えですか? 

副島様:
まず、「とりあえず大海に潜ってアワビやサザエを探してこい」と言われても、誰も潜りたくないですよね。その点、我々が活用させていただいているナウキャストさんのデータは、「この辺りにアワビの群れがあるんじゃないか」と示してくれる魚群探知機に値すると感じています。大海に素潜りするよりはるかに高い確率で、ニーズをお持ちのお客様に出会えると体感していますので、こうした入り口の部分にデータを使わせていただくというのが、まずあるかなと思いますね。

辻中:
我々のデータをお使いになる前は、どのような情報収集をしておられたのですか?

副島様:
例えば、日経新聞などで「生命保険会社がこれだけの人員を新たに採用した」といった情報を業界別にチェックしていました。しかし、記事になっている時点でそれはもう終わった話です。ナウキャストさんの求人データは実際に採用する前の情報なので、少し先の未来の社員数を推測できます。さらに、特定の時点のデータだけでなく、それが時系列でどのように変化しているかを捉えられる点が非常に面白いと感じました。若い会社さんでよくあるのが、「人員が急増したからオフィスを移らざるを得ない」というケースです。急成長している企業が毎年継続採用していれば、オフィス移転は必至です。新築ビルを作り続けている我々としては、元気な会社さんのファーストステージとして、新しいビルに拠を構えていただきたいですね。

辻中:
これまで個人的あるいは属人的に行われていたアナログな情報収集が、弊社のデータを活用することにより、ある程度網羅的かつ継続的に実施できるようになったのですね。

副島様:
そうです。それがまさに、我々が進めている「仕組み化」に繋がると考えています。

DXに積極的に取り組み、独自路線で付加価値を提供

辻中:
非常に興味深いです。今はオフィス営業の入り口におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めている段階だと思いますが、これが仕組み化できたら、企業の成長性の見極めや賃料交渉といった場面でも、弊社のデータをご活用いただきたいですね。

副島様:
そうですね、次の段階で目指したいと思っています。

辻中:
一方で、住友不動産さんはデジタルツール一つとっても本当に必要がなければ導入しない、という姿勢を貫いていらっしゃる印象があります。

副島様:
確かに、コスト意識は高いかもしれません。他社との会議で、相手が10人に対し当社が1人や2人だったりすることもあります。

そもそも我々は、東京で土地を持たずにスタートしたデベロッパーです。他社と同じことをやっている限り一番にはなれないと思っています。REIT(不動産投資信託)も作っていませんし、ビルも売ってきませんでした。いろんな意味での「独自路線」がたくさんあります。しかし、DXは単なる業務のサポートや補完ではなく、業務の根幹を変え得るものですから、これからも独自路線でお客様に付加価値を提供するためにも、積極的に取り組んでいきたいですね。

辻中:
ナウキャストもそれをお手伝いしていければと思います。本日はありがとうございました。

※所属・肩書等は取材当時のものです。


企業名  : 住友不動産株式会社
事業内容 : ビルの開発・賃貸
       マンション・戸建住宅の開発・分譲
       宅地の造成・分譲
       海外不動産の開発・分譲・賃貸
       建築土木工事の請負・設計・監理
       不動産の売買・仲介・鑑定 ほか
企業サイト: https://www.sumitomo-rd.co.jp/


構成・文:宮川歩
写真:保田容之介

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