株式会社良品計画 店舗開発部 東日本開発課 課長 吉川純
株式会社良品計画 店舗開発部 西日本開発課 課長 牛迫陵
『無印良品』の企画開発から商品調達、流通・販売までを行い、国内外で1,000店以上の店舗を運営する株式会社良品計画様。店舗開発部の吉川様と牛迫様に、クレジットカード決済データを活用した商圏分析の取り組みについて、お話をうかがいました。
- まずは御社の事業やサービスについて、ご紹介いただけますでしょうか。
吉川様:
『無印良品』を中心とした専門店事業の運営、商品企画、開発、製造、卸および販売を行っております。衣料品、家具、生活雑貨、食品、家など、暮らしにまつわる商品をそろえ、国内外1,000店以上の店舗を展開しています。
‐ お二人のご所属部署は、どんなミッションを負ってどんな活動をされているのでしょうか。
牛迫様:
全国各地で、生活者の皆様に役に立つ商品とサービスの提供ができるよう、国内で年間100店舗を目標に「感じ良い暮らしと社会」の実現に向けて店舗開発していくことが、店舗開発部のミッションになります。
これまでは駅前のビルや商業施設の中に多く出店をしていたのですが、現在は全国各地の食品スーパーマーケットに隣接した、よりお客様にとって身近な場所への出店に重きを置いています。
物件情報の収集、条件の交渉等の営業活動が主な業務となりますが、お客様が毎日のお買い物をする場所である、食品スーパーマーケットの隣に、無印良品が商品やサービスを提供するだけでなくコミュニティセンターとしての役割を持つ店舗を開発することで、生活になくてはならない存在としてお役に立っていきたいと考えています。
- 今回ナウキャストがご支援させていただいたお取り組みの背景について、教えてください。
吉川様:
全国津々浦々に店舗を出店するにあたってまったく同じお店を出すのではなく、その地域で求められている店舗の規模感や商品構成を見極めて店舗開発していく必要があると考えています。
通常は、実際にお店を運営していく販売部と意見交換しながら商品構成などを決めるのですが、どこまでいっても担当者の経験に基づいた肌感覚がベースになっており、さらに、コロナ禍の前後でお客様の興味関心や消費行動が目まぐるしく変化したことで、今までの経験値や感覚的なものとのずれが生じる恐れもありました。
社内のデータを利用することもありますが、われわれが持っているお客様のデータというのは、実はそこまで豊富ではなく、どういった商品がどういった世代に支持されているか等の詳細は把握することができません。
自分たちでイチからデータを収集するのはあまりに困難なため、データ分析のプロである、ナウキャストさんのお力をお借りすることにしました。
牛迫様:
弊社として一番知りたいことは、「このエリアでは、どういった世代の人に、どんなものが好まれるのか」。
あとは、僕らがどれだけ求められている商品やサービス群を提供できるか次第ですが、無印良品の強みは、生活雑貨もあれば衣料品、食品もあって、要は衣生食にまつわるあらゆる商品をそろえることができる点です。
まずはお客様のことをより理解して、確実なアプローチをかけられるようになることが理想だと考えています。
- ナウキャスト以外にもデータ提供や分析サービスを提供する会社があると思いますが、今回ナウキャストを選んだ理由を教えてください。
吉川様:
既存の無印良品の店舗は、ショッピングセンターや複合施設内への出店が多いのですが、例えば位置情報データを基にした分析だと、施設内の業態・店舗別に情報を取得することが難しいため、当社にとって必要な情報を取り切れるかが課題でした。ナウキャストさんはクレジットカードの決済データを基にしているため、施設内でも正確に、店舗・業態別に分析ができるということを魅力に感じ、依頼することを決めました。
- 今回のお取り組み内容(分析内容)について、詳しく教えてください。
吉川様:
今回は新規店舗ではなく、商品構成の見直しに力を入れている、面積が大きい既存店舗をいくつかピックアップし、分析しました。
店舗は大きいほど遠方からの集客が期待されますので、わざわざ遠方からお越しいただくための「理由」が必要です。それと同時に、近隣エリアにお住いのお客様がわざわざ遠方に行かずとも、近くの無印で解決できて「便利」と思っていただけることも重要で、この2つが揃った店舗であることが理想です。
従来、商品構成を見直す際は、売上データを見て、売れ筋にあるものをさらに伸ばしていくという方向性で商品構成を考えることが多いのですが、そのやり方ですと本当はニーズがあるのに売り場に出ていない、ゆえに売れていない商品を見落とす可能性があります。
そのため、今回は主にお客様が何を期待し、当該店舗の商圏でどういった買い物をしているのか全体的な傾向がわかる「業態別流通額推移」と、出店しているエリア内にお住まいの方が、そのエリアでどれだけ消費支出があるのか、またエリア外ではどういった項目に消費支出があるのかがわかる「地元消費率」の2側面で、データを分析いただきました。
- 今回のお取り組みは、御社の意思決定をどのようにサポートできましたでしょうか。
牛迫様:
例えば、ある店舗では「家具が売れる」ということが顕著に出ました。具体的には、家具雑貨の地元決済率が、明らかに他エリアの平均よりも高かったのです。
今までは、担当者の肌感覚や社内の売上動向を見て「おそらく需要がある」という見込みでしか動けず、実際の市場需要と予想が外れていた、ということもありました。
今回、地元消費率の傾向を出していただいたことで、この商圏にお住まいの方は「家具は地元で買う」という傾向が強いことがデータで裏付けられたので、「生活・住」商品を強化していこうと自信を持って意思決定することができました。
また、年代や性別ごとの分析からお客様像も見えてきて、そういった層をキャッチアップできるような商品構成のヒントになりました。
- 改めて、当初の背景や課題感に照らして、今回のお取り組みをどのように評価されますか。
吉川様:
一つの判断基準として有意義なデータだと感じます。今回は既存店の分析をしましたが、冒頭で話したような新規出店の場合には特に、出店を検討しているエリアにはどのようなお客様がいて、どのような商品を求めているのかをあらかじめデータで可視化できたら、意思決定がしやすくなり、お客様のお役にもたてることができますね。
- 最後に、これからのナウキャストに期待することがありましたらお聞かせください。
牛迫様:
店舗開発に関しては、私も吉川もいろいろと経験を積んできましたが、分析いただいたデータの読み取りがなかなか難しいと感じます。例えばAIを活用することで、このエリアだとどのような商品構成にすれば、どのくらいお客様の生活に貢献できるのかを提案してくれると助かりますね。また、今は店舗やエリアを指定して、その都度分析いただいていますが、任意のエリアを指定したら、性別や年代の構成比、地元消費率の傾向などがパッと表示され、われわれだけでもある程度自由に分析ができるようになると、なおよいですね。
※所属・肩書等はインタビュー当時のものです。
企業名 : 株式会社良品計画
事業内容 : 『無印良品』の企画開発から、商品調達、流通・販売までを行う製造小売業
企業サイト: https://www.ryohin-keikaku.jp/
取材・文:宮川歩
写真:關剛彦